自宅に戻った未来はシャワーを浴び、短時間で身支度を整えいつも通り出勤した。
朝食をゆっくり食べている暇がなかったので、コンビニで買った菓子パンとマグネットスペースでいれたコーヒーを片手にフリースペースになっている窓際の眺めのいいカウンター席に座る。
皇居のお濠を眼下に仕事ができるこの場所は特等席で未来のお気に入りの場所だ。
社長室や役員室より一般従業員の為に眺望の良いスペースを割り当てる考えもこの会社の素晴らしいところだと思っている。
パソコンを開き、パンにかぶりつきながらとりあえず朝一のメールチェックを終える。
和輝からはあの後一度『無事に家に着いたか?』とスマホにメッセージが届いたので『無事です』と返した。
『わかった』と短い答えを最後にやりとりが続くことは無かった。
(さすが大人の対応だわ。私が忘れて欲しい思った気持ちを汲んでくれているんだ)
フロアを見渡す限り和輝の姿は見えないが、副社長室はひとつ上の階なので出勤しているかどうかはわからない。
未来は心の中で「大丈夫」と自分に言い聞かせる。
昨夜、和輝は自分だけを見てくれていた。



