逞しさに見合った精悍な顔立ちをしており二重の切れ長の目は涼やかで、すっと伸びた鼻梁、引き締まった男らしい口と共に最善の配置がなされている。艶やかな黒髪は軽く撫でつけ後ろに流している。
 大人の男として隙が一切ない姿は誰が見ても “迫力のあるクールイケメン”という印象を受けるだろう。

 今は亡き祖父である前社長が興したINOSEは社長と彼の手腕で盤石な経営を続けている。
 時に合理的に冷酷な判断を下す事も厭わない和輝は、カリスマ性を備えながらも本心が見えない『冷徹副社長』と社内外で畏怖される存在だ。
 一般社員の自分から見たら、あまりにも遠い存在である。

(今日は猪瀬家に行くって約束してるけど、会えるといいな)
  未来は和輝の姿をしばらく眺めた後、残りのコーヒーを飲み干した。




「未来です!」
「未来さん、お帰りなさいませ」
 インターフォン越しの会話が終わると同時に重厚な門のロックが外れ自動的に開く。
 慣れた足取りで未来はよく手入れされた庭を通り過ぎ玄関に入っていく。