別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~

 和輝なら嫌じゃないし怖くもない。むしろ彼でなければ嫌だ。
 恥ずかしいけれどやっぱり初めては好きな人がいい。

(一度だけ。最初で最後ならきっと許される)

「……覚悟なら、あるよ」
 
 未来はおずおずと頬に添えられた和輝の手の甲に自分の掌を重ねた。気持ちを伝えるために目は離さなかった。

「和くんが嫌じゃなかったら……もらってください」
 
 大きく何かが動き出す前の張りつめた静寂がふたりの間に落ちた。

「わかった」

 和輝は短く応えると上半身をかがめ、唇を重ねてきた。

「ん……」

 バーでされた性急なキスより柔らかくて優しいキスだった。

 未来が唇の感覚を追っている内に和輝の手が未来の襟ぐりにかかり、器用にワンピースを脱がしていく。
 耳たぶに、首筋に唇を這わせつつ、彼の掌が下着姿になった未来の輪郭を探るように撫でていく。

 胸元の下着がずらされ、柔らかいところに吸い付かれると、身体の芯が蕩けるような心地よさが鼻にかかったような甘えた声となって漏れた。

「……ん……や、はずか、しい」

 媚びるような声が自分のものとは思いたくなくて声を抑えようとするが、和輝は未来の唇を食みながら囁く。