別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~

 自分でお願いしておいてどうかと思うが、まさか本当にこんな状況になるとは思わなかったのだ。

 実際こちらは気まずさを通り越して、恥ずかしすぎてどうにかなりそうだ。
 きっと顔は茹でたこのように真っ赤になっているだろう。

「本当に今更だな」

「ごめんなさい……」

 すると和輝は覆いかぶさったまま片手を未来の頬に添えた。
 大きな掌の冷たい感触にやはり自分が紅潮していることを知る。

「わかった。未来、ここから先は無理には進めない。君が嫌だったり、怖いと思うならこれ以上のことはしない。俺は帰るから君はひとりでここに泊っていけばいい」

 和輝は低い声で「でも」と言葉を切ってから続けた。

「俺のものになる覚悟があるならそのつもりで君を抱く」

「和くん……」

 ベッドサイドの間接照明にほのかに照らされた和輝の顔。その表情から感情は読み取れない。

(そっか。頼まれたこととはいえ、和くんは初めてを失う私を気遣ってくれているんだ)

 やっぱり嫌だ、怖いと言えば言葉通り彼は未来から離れて帰っていくだろう。

 そして二度と未来に触れることはない。

 未来は和輝の言葉をもう一度心の中で反芻し考える。自分はどうしたいのかと。