「お母さん、おはよう。私25歳になったよ」

 5月21日。迎えた誕生日の朝、アパートの部屋で目覚めた未来は壁側に置かれた小さなキャビネットの上に飾られた写真に話しかけた。

 小さなフォトフレームの中の母は優しく微笑んでいる。
 ベッドから出ると、いつものように洗面所で顔を洗い歯を磨き、洗濯機を回しトーストとサラダで簡単な朝食をとる。

 雪成にお肌にいいからと無塩のトマトジュースを勧められ毎朝飲むようにしている。
 牛乳も飲むとジュースに含まれるリコピンの吸収が良くなるらしく、余裕があれば食後にホットミルクを飲むようにしている。

 夕方の和輝との待ち合わせの前に雪成の勤めるサロンに寄る事になっているので、日曜日だからといってのんびりとはしていられない。

「ここで過ごすのもあと少しかぁ」

 マグカップを片手に部屋を見回しつつ、未来は独り言ちた。

 未来は1週間後にこの家を出て昔家族で住んでいたマンションに戻る事にしていた。

 アパートの更新時期近づく中、先月隣に越してきた男子大学生がよく大音量で音楽を流したり夜に友達を呼んで騒いだりするようになったのが切っ掛けだった。