「長い片思いを吹っ切る事にした。不毛だもん」
「“和くん”のこと? そもそもまだアンタがあの御曹司に片思い中だったなんてビックリしてたんだけどねぇ」
猪瀬家を訪れた数日後の仕事帰り、未来は久しぶりに会う親友と新宿にあるスペインバルに来ていた。
170cm、ほっそりとした体つきで色白。メイクもばっちり、アッシュブラウンに染めた髪は肩甲骨近くまで伸びていて、右耳に2つ、左耳に3つずつピアスが付いている。
スキニーパンツの上にざっくりとした丈長ニットを着ただけでも妙に艶っぽさがあるのだから色気の無い未来からしたら羨ましい。
現に男性客のグループがチラチラこちらを伺っている。しかし親友はそんなことはお構いなしに呆れた声を出した。
「ホント、未来は馬鹿みたいに一途なんだから」
そういいつつも、こちらを見る目はこちらを馬鹿にしたものではない。
「ユキちゃんには絶対そう言われると思ってたけど、今回ばかりはやっと諦める決心できたから」



