別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~

 美味しいご飯を食べさせてくれたり、好きなものを買ってくれたり、その日は何でも願いを叶えてくれる未来だけの王子様になってくれる。

(私、最初の頃は和くんが構ってくれるからって浮かれてたなぁ。その分現実は厳しかったけど)

 未来が現実を痛感したのは5年前、20歳の誕生日のことだった。

 その日も和輝のエスコートでレストランを訪れていた。

 少しでも女性として意識してもらいたいという気持ちで未来は『もう二十歳だし、ちょっとは大人っぽくなった?』と和輝に切り出してみた。

『確かに昔に比べたら大人っぽくなったし、恋人がいてもおかしくないな』

『もう、昔って、どれだけ子供のころと比べてるの? それに……恋人なんていないよ』

 苦笑した未来に帰ってきた言葉は残酷だった。

『そうなのか? でも、これからは相手が出来たらすぐに報告しろよ。恋人を差し置いて君の誕生日を祝うほど俺も野暮じゃないから』

 彼自身が未来の恋人になるなど、これっぽっちも考えていない。そういう口調だった。