別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~

 彼への想いは日々膨らんでいったが、猪瀬家に庇護された生活の中で表に出していいものではないと思い、未来はあくまで明るく元気な“妹”として過ごした。

 猪瀬家で過ごしたのは約5年。本当に楽しかった。
 美津子は料理や着付けやなどの作法を一通り教えてくれたし、井部を始め猪瀬家で働く人たちの作業を手伝わせてもらうのも楽しかった。
 芸術など様々な分野に造詣が深い貴久はよく美術館や博物館に連れて行ってくれた。
 
 勉強は和輝が見てくれたので高校に無事入学できたし、塾に行かなくても成績悪くなかった。

 この家でご厄介になっている身でヘタな成績を取る訳にはいかないという気持ちもありがんばっていたのもある。

 しかし未来が高校卒業した後、和輝は会社の近くにマンションで独り暮らしを始めたためふたりで顔を合わせる機会は減ってしまった。

 それでも15歳の時から変わっていないことがひとつだけある。

 未来の誕生日、和輝は未来とふたりで過ごしてくれるのだ。