母の居ない生活に少しづつ慣れてきた頃、父の名古屋研究所への赴任が正式に決まった。
父から告げられたのは『青森の親戚の家に行って欲しい』ということだった。
一緒に来るかと聞いてももらえなかった。
未来は『ああ、私棄てられたんだ』と思った。
『私はお父さんにとってどうでも存在。お父さんは仕事が、研究さえあればいいんだ』と。
母を亡くし、父から不要とされる現実に打ちのめされている中、未来を引き取りたいと申し出てくれたのが猪瀬家だった。
切掛けは和輝だった。彼が未来の置かれた状況を知り、猪瀬家で暮らせるよう貴久と未来の父を説得してくれたのだ。
未来は対外的に“親戚の娘”として猪瀬家に入ることになり、貴久も美津子も、そして和輝も家族のように暖かく迎えてくれた。
引っ越した日、和輝は未来の頭を優しく撫でながら言ってくれた。
『今日から俺の事を本当の兄だと思って頼ってくれればいいし、我儘も言っていいから』
「“兄”だと思っていいって言われて、和くんへの恋心を自覚し始めたのって皮肉な話だよね」
窓の外を眺めながら未来はひとり苦笑した。
父から告げられたのは『青森の親戚の家に行って欲しい』ということだった。
一緒に来るかと聞いてももらえなかった。
未来は『ああ、私棄てられたんだ』と思った。
『私はお父さんにとってどうでも存在。お父さんは仕事が、研究さえあればいいんだ』と。
母を亡くし、父から不要とされる現実に打ちのめされている中、未来を引き取りたいと申し出てくれたのが猪瀬家だった。
切掛けは和輝だった。彼が未来の置かれた状況を知り、猪瀬家で暮らせるよう貴久と未来の父を説得してくれたのだ。
未来は対外的に“親戚の娘”として猪瀬家に入ることになり、貴久も美津子も、そして和輝も家族のように暖かく迎えてくれた。
引っ越した日、和輝は未来の頭を優しく撫でながら言ってくれた。
『今日から俺の事を本当の兄だと思って頼ってくれればいいし、我儘も言っていいから』
「“兄”だと思っていいって言われて、和くんへの恋心を自覚し始めたのって皮肉な話だよね」
窓の外を眺めながら未来はひとり苦笑した。



