別れを決めたので、最後に愛をください～60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す～

「わかった。今年はたしか日曜だったな。欲しいものがあったら一緒に買いに行くか？」

「ううん、美味しいご飯食食べれたらそれで十分」

「まったく未来は欲が無いな。わかった。何でも好きなものを食べさせてやる」

「じゃあ、お肉がいいな。高級なお肉！」
　あえて未来は明るくおねだりをする。

「わかった。肉の美味い店探しておく」

「ありがとう！　楽しみにしてるね」

　顔だけ彼に向けてお礼を言うと、フッと笑った和輝は長い腕を伸ばし未来の頭をポンポンと撫でた。

　こうして頭を撫でてくれるのも昔から変わらない。

　未来が嬉しいことを報告した時、悲しみに沈んだ時、そして不安に押しつぶされそうな時もこの手はいたわるように撫でてくれた。

　会社では近寄りがたい雰囲気すら漂わせ、何を考えているか分からないと畏怖される和輝だが、彼の海のように深い優しさを未来は知っている。
　
　時折見せてくれるこの柔らかい表情は自分だけのものとつい自惚れたくなる。
　それが、幼馴染の“妹”に向ける親愛の情に過ぎないにしても。
　
　再び車は走り出し、しばらくすると未来の住むアパートに到着した。