別れを決めたので、最後に愛をください～60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す～

（やっぱり和くんのマンションに私がいたらまずくない？　いくら“親戚の娘”っていっても加奈さんは私が他人だって知っているし、私が和くんのこと好きだってきっとバレてる）

　日比野家との縁談が整った今、自分が和輝と同居している事実は和輝や猪瀬家の対面的に非常に問題がある。

　東京駅から中央線の快速に乗り、マンションの最寄り駅であるお茶の水に着くが未来は降りることが出来なかった。

（やっぱり帰るのはやめよう。和くんの事だからきっと察してくれる）

　未来は電車に乗ったまま、和輝にメッセージを入れた。

《今日から友達の家に泊まって引っ越し先探します。落ち着いたらこっそり荷物は片付けに行くね。いままでありがとう。私のことは心配しないでね！》

　加奈が今夜は両家の父親を交えての会食だと言っていた。きっと今頃真っ最中だ。
　和輝は会食の場でスマートフォンを見るような人ではないから、このメッセージを確認するのは少し後になるだろう。

（さて、今夜からどうしよう。とりあえずどこかホテルをさがそうかな）

　雪成を始め友達は何人か心当たりがあるが、皆仕事をしたり家庭を持ったりしている。急に今夜から泊めてくれというわけにもいかない。

　考えている内に電車は新宿に着いてしまった。
　このままだとどんどん都心から離れてしまうと思った未来は電車を降りた。