別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~

 思わず感嘆の声が漏れる。
 優しく揺れる光の元ゆったりと泳ぐ大小の魚たちを見ていると自分も深い海の中で一緒に泳いでいるような気持になる。

「本当だな。癒される」

 隣から聞こえる和輝の低い声を心地よく感じながら未来は切り出した。

「和くん、お父さんに会って私と話すように言ってくれたんだってね」

「……お父さんに聞いたのか」

「うん、私が気を遣うから言わないでほしいって言ってたことも聞いた」

 和輝は「そうか」とため息交じりにと声を落としてから続けた。

「出張のついでに寄らせてもらったときに、たまたまそういう話になっただけだ」

 父の研究所は名古屋駅から離れており交通の便もあまりよくない。大阪で仕事をした帰りについでに寄るような場所ではない。きっとタクシーを飛ばしてくれたのだろう。

(和くんはお父さんにわざわざ時間を作って会いに行ってくれたんだ……私の為に)

 和輝は長年にわたる自分たち親子のわだかまり、そして未来の置き去りになっていた気持ちを知っていたうえで動いてくれたのだろう。

「ありがとう。お父さんと話せて良かった。話さなきゃわからないこといっぱいあったから」