別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~

 都会型の施設なので広くはないが、趣向を凝らした展示方法が楽しい。
 
 クラゲがゆらゆら揺れる水槽や、マゼランペンギンのかわいらしいしぐさを間近で見れて生き物好きの未来のテンションは上がる。

「和くん見て! チンアナゴがいっぱいいる」
 
 未来はある展示の前で釘付けになった。砂の中からたくさんのチンアナゴが気まぐれに顔をだしたり、引っ込んだりしている。

「“キモカワいい”と話題になったらしい。たしかに長細い生き物がここまでいっぱいいるとそう言われているのがわかる気がするな」

 和輝も興味深げに明るい水槽の中を眺める。

「えー、普通にかわいいのに」

「君ならそう言うと思ったよ。小さいころから生き物はなんでも好きで、うちの庭で『トカゲを捕まえる』って聞かなかったからな」

「わあ、覚えてないけどやってそう」

「俺はそれに無理やり付き合わされた」

「あはは、ごめんね」

 未来は和輝と顔を合わせて小さく笑った。

 ひとしきり館内を見て回った後、メインである大水槽前のベンチにふたりで並んで腰かけた。
 周囲の照明は落とされており、ほの暗い。

「わぁ、綺麗、海の中にいるみたい」