「君にどう接していいかわからなかった。だからってさらに仕事に没頭したんだから本末転倒だ。あの時まだ中学生だった君が不在がちな僕といるより青森で暮らした方が安心だと思ったのは本心だ。結局猪瀬さんのご厚意であちらのお世話になることになったけれど、父親として君とちゃんと向き合うべきだったし話をすべきだった……今更だが、すまなかった」

「お父さん……」

(口下手なお父さんがこんなに真正面から私に自分の気持話してくれるなんて)
 
 未来もずっと胸の奥に沈めていた本音を零す。

「……お父さんに青森に行くように言われたとき、棄てられたような気持になったの。私は邪魔なんだって」

「ああ、そう思われても仕方ない。でも未来が邪魔なんて思ったことは一度もない。それだけは信じてほしい」

「寂しかったし、辛かった……でも、お父さんも辛かったのも、わかる」

 いつしか未来の声は涙に震えていた。

(私、ずっとこうやってお父さんと話したかったんだ)

 親子なのにこんな簡単なことを一度もしてこなかったなんて。でも大人になった今だからこそ理解できる気持ちもある。