「わかってたんだ。昔からお母さんや君に寂しい思いをさせてたこと。家のことも、お母さんに任せきりで父親の役割なんて何もできなかった。それに……」

 言葉を切ると、父は絞り出すように言った。

「お母さんが事故に遭ったのも、僕のせいだ」

「そんなこと……!」

 慌てて否定しようとしたのに、未来は言葉に詰まる。

 母は過労で倒れた父の元へ向かう途中の事故で亡くなった。もちろんそれを父のせいとは言うことはできない。

(――でも私、お父さんのせいだって全く思わなかった?)

 母が亡くなった時、事故に遭うと知っていたら父のもとに向かわせなかったのに、もうちょっとゆっくり母と話をしてから送り出していたら、時間がずれていたらと何度も想像して心が張り裂けそうになった。

 その中で“お父さんが過労で倒れなければ”と考えなかっただろうか。

 未来は初めて気づいた。

 父は未来の気持を感じ取り、自分のせいで娘は母親を亡くしたと負い目を持って過ごしてきたのではないだろうか。