別れを決めたので、最後に愛をください～60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す～

　５０代だが成人病とは無縁そうな引き締まった体形が若々しい。
　和輝の彫りの深い顔立ちは父親から遺伝したと思われる。
　その社会的地位と温厚な性格も相まって若い頃はかなりモテたのではないだろうか、いや今でも十分モテるはずだが浮いた話や再婚の話は一切聞いたことがない。

　それは常々貴久が『僕の生涯のパートナーは晶子だけだ』と言って亡くなった妻への思いを公言してはばからないからだろう。

「おじさん、お帰りなさい」

「ただいま。今日は未来ちゃんが帰って来るって聞いたから、おじさんさっさと会食を終わらせてきたよ」
　貴久は快活に笑うとソファーに腰掛け相好を崩す。

「あらあら、社長がそんなことでいいのかしら」

「たまにはいいんだよ。母さんこそ、今まで未来ちゃんとひとり占めしてたんだろう？」

「そうよ、”女子会”は楽しいんですから、男性は邪魔です」

「随分年の差がある女子会だなぁ　未来ちゃん」

「私も美津子さんと女子会するの楽しいですから」

　未来が笑って答えると「おじさんも仲間に入れてくれよ」と貴久も拗ねたフリをする。