別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~

 衝撃はどれほどだったろう。
 彼女は父親に連絡し、ひとり病院に駆けつけ……しかし、間に合わなかった。

 一瞬で彼女の幸せを奪った無機質な電話の音も、受話器を上げるという行為も当時の状況をフラッシュバックさせしまうに違いない。

(電話が鳴るたびに、今みたいにおびえているのか? この家で……ひとりで)

 そう思うと和輝の胸はつぶれそうになった。

 電話の相手は彼女の親戚だった。

『実はね、お父さん名古屋の研究所への赴任が正式に決まって。それで、私は青森の遠縁の家にいく事になったの。今の電話はそのお家の奥さん。引っ越す日程をお父さんに相談したかったみたい』

『青森? なぜだ。おじさんと一緒に名古屋にいかないのか』

『一緒に行ったとしても、お父さんが忙しいのは変わらないし、親戚と暮らした方がいいみたい。それに……私がいるとお父さんの邪魔になっちゃうから』

 諦めたように力なく笑う未来。心を凍らせて、顔だけで笑っているのがわかった。

 たしかに不在がちの父親と暮らしてひとりになるより、親戚の家の方が安心かもしれない。しかし未来はその親戚に会ったのは母の葬式の時だけだというし、青森に行ったこともないという。