しかし、和輝が中学に入学した直後、母が病に倒れた。難治性の血液の病気だった。
入退院を繰り返していた母が屋敷に戻ってくると、未来の母は娘を連れてよく猪瀬家を訪問した。
“かずきおにいちゃん”から“かずくん”と呼び方が変わったのは、母が自分のことをそう呼んでいたのを未来が真似したからだ。
初めてそう呼んだ時の彼女の得意げな顔は愛らしかった。
母も彼女たちに会うと表情が明るくなり、父も祖母も嬉しそうだった。もちろん和輝も。
園田母娘の存在は猪瀬家にとって無くてはならない存在になっていた。
懸命の治療も空しく母が亡くなったのは和輝が中学2年の時だ。
未来が『かずくんのママに食べさせる』と柿の木に登ったあの時、すでに母の余命は宣告されていたのだ。
優しく笑うだれからも好かれる人だった。和輝にも愛情を惜しげなく注いでくれた。
妻を深く愛していた父の様子は息子から見ても痛ましいものだった。祖母も立っているのがやっとの状況だった。
周囲の大人たちが涙に沈む葬儀の中、和輝はじっと耐えた。
ここで自分が泣いたりしたら周りに気を遣わせてしまう。猪瀬の長男として立派に母を送り出す。もともと感情が顔に出るタイプではないから大丈夫だと必死に感情に蓋をし立ち続けた。
入退院を繰り返していた母が屋敷に戻ってくると、未来の母は娘を連れてよく猪瀬家を訪問した。
“かずきおにいちゃん”から“かずくん”と呼び方が変わったのは、母が自分のことをそう呼んでいたのを未来が真似したからだ。
初めてそう呼んだ時の彼女の得意げな顔は愛らしかった。
母も彼女たちに会うと表情が明るくなり、父も祖母も嬉しそうだった。もちろん和輝も。
園田母娘の存在は猪瀬家にとって無くてはならない存在になっていた。
懸命の治療も空しく母が亡くなったのは和輝が中学2年の時だ。
未来が『かずくんのママに食べさせる』と柿の木に登ったあの時、すでに母の余命は宣告されていたのだ。
優しく笑うだれからも好かれる人だった。和輝にも愛情を惜しげなく注いでくれた。
妻を深く愛していた父の様子は息子から見ても痛ましいものだった。祖母も立っているのがやっとの状況だった。
周囲の大人たちが涙に沈む葬儀の中、和輝はじっと耐えた。
ここで自分が泣いたりしたら周りに気を遣わせてしまう。猪瀬の長男として立派に母を送り出す。もともと感情が顔に出るタイプではないから大丈夫だと必死に感情に蓋をし立ち続けた。



