彼女は猪瀬美津子、現社長の母であり、和輝の祖母だ。
前当主でINOSEの社長だった夫は30年前に亡くなっている。
御年80近いのだが、小さな体で着物を着こなし、背筋もしゃんとしているため年齢より随分若く見える。
スマートフォンでトークアプリを使えるようになりたいから教えてほしいと連絡があり、未来は今日こうして屋敷を訪れた。
「未来ちゃん悪いわね。息子や孫はめんどくさがって教えてくれないし、井部もこういうのには疎くてねぇ……」
「おじさんや和くんは忙しいもの。私で良ければいくらでも教えますよ」
未来は美津子の隣に座り、スマートフォンを覗き込んで操作の仕方を丁寧に教えていった。
「このマークをタッチすると開くから、ここからメッセージを送る人を選んで……」
「文字が小さくてねぇ、よく見えないのよ」
「じゃあ、サイズ大きくしておきますね」
ふたりは傍から見たら祖母と孫娘に見えるかもしれない。
しかし未来は美津子の孫でもないし、この家の血縁者ですらない。
猪瀬家と縁を持ったのは、今は亡き和輝の母と未来の母が親友だったことが始まりだった。
前当主でINOSEの社長だった夫は30年前に亡くなっている。
御年80近いのだが、小さな体で着物を着こなし、背筋もしゃんとしているため年齢より随分若く見える。
スマートフォンでトークアプリを使えるようになりたいから教えてほしいと連絡があり、未来は今日こうして屋敷を訪れた。
「未来ちゃん悪いわね。息子や孫はめんどくさがって教えてくれないし、井部もこういうのには疎くてねぇ……」
「おじさんや和くんは忙しいもの。私で良ければいくらでも教えますよ」
未来は美津子の隣に座り、スマートフォンを覗き込んで操作の仕方を丁寧に教えていった。
「このマークをタッチすると開くから、ここからメッセージを送る人を選んで……」
「文字が小さくてねぇ、よく見えないのよ」
「じゃあ、サイズ大きくしておきますね」
ふたりは傍から見たら祖母と孫娘に見えるかもしれない。
しかし未来は美津子の孫でもないし、この家の血縁者ですらない。
猪瀬家と縁を持ったのは、今は亡き和輝の母と未来の母が親友だったことが始まりだった。



