そう​───────…

私はただ。
オムライスが食べたかっただけ。
本当ならお兄ちゃんのオムライスが
食べたかった。食べたい、って言ったら
すぐ作ってくれるあの、フワフワのやつ。

………食べたかった。

それがもう二度と食べられない事を
私は知っていた。

だから…自分で作れるかなって思って、
卵買いに行こう、って…、
スーパーに、向かってたのに。

こんな路地裏でチンピラに殺されかけるとか。

…バカみたい。

どうせ卵買ったとこで
料理なんて出来る訳ないのに。

作り方なんて知らない癖に。

悔しくて…、悲しくて…、

まだズキズキと痛む首を押さえて
下唇を強く噛む。

そしてダンゴムシみたいに
小さくなって背中を丸めた。

なんでこんな目に合わなきゃいけないの……。

どこからともなく込み上げてくる
色々な感情がぶわぁ、と涙に変わっていく。

「……っ、…、ふぇ……っ、
う‪”‬ぅわぁ‪”‬ぁぁぁぁぁあぁん…………」

せき止めていたものが、もう……、
せき止めていられなくて
ものすごいスピードで涙が頬を伝っていった。

もう、嫌……。