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「あ、ちょっとシャワー浴びていいか?」

布団の中でコクリ、と頷いた芹奈ちゃんは
俺の親指をグイッと引っ張りながら
起き上がった。

人の親指を掴む癖がある事は少し前、
海里さんが言っていたから知っていた。

その時は聞き流していた海里さんの
芹奈ちゃん情報だったが、
こういう事か、と少し腑に落ちる。

「……ここ」

「あぁ、ありがとう」

案内してくれた洗面所も相変わらず
広く、やたらめったらピカピカしていた。

さっそくシャツを脱ごうと裾を握る俺を
芹奈ちゃんが不思議そうに見ていた。そして

「……私も入る」

そう言ってまた俺に抱きついてきた。

ん…?私も…?入る…?

すぐには理解出来ない…理解し難い言葉だ…。

「え?でっ、でも…」

複雑な顔をして返す言葉を探している俺を
ジー、と見上げる芹奈ちゃん。

「お兄ちゃんは…ぅ、
一緒にぃ…、入ってくれたもん…っ」

ハムッ、と下唇を徐々に巻き込みながら
そんな事を言われてしまって…

「うぅ……っ」

あっという間に瞳の表面がうるうるしだした。

「あぁ…!ほら、泣くな!一緒に入ろう、な?」

「うんっ!」

結局一緒に入る事に…。