「え?」

俺の言葉を遮るように呟いた芹奈ちゃんは
俺の胸に顔を埋めて言った。

「……ももき。」

「……」

その時の芹奈ちゃんは同じ布団にいる俺を、
怖がる所か、ちゃんと‪”ももき‪”だと、
認識しているようだった。

「お兄ちゃん……死んじゃった、って
ちゃんと分かってるもん…っ…」

鼻をすする音が聞こえてきた。

何て言葉をかけてあげたら正解なんだろう。

1人たどたどしく視線を動かして、
ごめん、と心の中で謝る事しか出来なかった。

涙が静かに頬を伝って、
だけど気付かれないようにすぐに拭う。

「ももき……ぃ、どこにもいかないで……っ」

さらにギュゥ…と、掴まれた。

俺を見つめて
掛け布団の中でまた体を震わせている。

さっきまでスースー、と寝息を立てて
眠っていたその姿とは一変。

あっという間に
傷1つないピンク色の可愛らしいほっぺが
びしょびしょになっていた。

「どこにも行かない。大丈夫」

手伸ばしてベッド横にあるティシュを掴む。

それを芹奈ちゃんのほっぺに当てると
フワッとした……儚い笑顔が零れ落ちた。

「うんっ!ずっといっしょ…っ」

純粋無垢でなんの汚れもないその瞳には
しっかりと俺が映っていて、
それがやっぱり少しだけ申し訳なく思えて。

そんな気持ちを悟られないよう
代わりに笑いかける事しか
今の俺には出来なかった。