【芹奈side】

「もー……そんな泣いたら可愛いお顔がぶちゃいくになっちゃうぞー?」

「ぐすん……っ、え……っ?」

なんで……

「…………お兄ちゃん…。。?」

ポツリ、と呟くと、お兄ちゃんは私の頭をぐしゃぐしゃしてニッ、と笑った。

「泣きすぎー。」

「……っ、泣いてないもんっ」

「嘘つけ」

ビシャビシャになった頬にお兄ちゃんの手が触れる。

お兄ちゃんの声も匂いも…、久しぶりだった。

ちょっとタレ目で、いっつも右目だけ軽く前髪に隠れちゃうとこも……。

全部……、最後に会ったお兄ちゃんの姿のまんまだった。

「ほら、立てるか?」

お兄ちゃんが私にそっと手を差し伸べる。

ゴツゴツして、豆だらけで傷だらけの手。

でも…、私が大好きだった手だ。

「……たてない」

なんか…、その手を掴んだらまたお兄ちゃんと離れ離れになっちゃいそうで、怖かった。

あと正直、ちょっと拗ねてた。

勝手に死んじゃって……っ、

私、寂しかったんだよ!?

「もうずっとここにいる。お兄ちゃんといる」

鼻をすすりながらそう言う。

もうどこにも行きたくなかった。

ここにお兄ちゃんがいるならいい。

…………いいもん。