【桃季side】

あれから2週間が経った。

紫音は再び警察に捕まった。
またしばらくは出て来れないと思う。

その影響で紫音と関わりのあった獄狂乱も薬物だとか、銃刀法違反だとかで、数十人がまとめて逮捕された。

元々犯罪まがいな族だった事もあり、
今回の件で獄狂乱は潰れた。

でも……

「せりなー…。頑張れよー…」

「……」

でも芹奈は…

まだ昏睡状態から抜け出せずにいた。

ーー((手は尽くしました。ですが……危険な状態です。目を覚ますかどうか。))

何十時間にも及ぶ手術の末、医師からされた説明は絶望的なものだった。

「ずっと待ってるからな…?」

「……」

芹奈は昨日、集中治療室から一般病棟に移った。

俺はずっとベッド脇のパイプ椅子に腰かけ、何度も呼び掛けていた。

しかしどれだけ呼びかけても、
すぐ横に置かれた心電図のピッ…ピッ…
という音だけが容赦なく鼓膜を刺激するだけ。

口元に酸素マスクを付けられ、
目の前で静かに眠りにつく芹奈は
表情1つ、動く事はなかった。

ピクリとも動く事のないその寝顔をどれだけ眺めただろうか。

入院着からはみ出しているか細い手をそっと手を握る。

ただただ手を握り続けた。

「早く元気になって、一緒に家帰ろうな?」

「……」

返ってくる言葉なんてないのに。
脳裏で芹奈の声が何度も過ぎる。

ーー((ももきだいすきーっ!))
ーー((だっこ))