海里さん……。

芹奈ちゃん…
めっちゃ……泣きそうな目、してますよ…。

‪”‬お兄ちゃん‪”‬、って…、
めっちゃ言ってますよ…。

俺なんかが……

芹奈ちゃんのそばにいて…
本当にいいんでしょうか。

俺なんかが……
この子に触れて…いいんでしょうか。

いろんな不安が過ぎって
芹奈ちゃんの背中に伸ばしかけた
自分の手が思わず止まる。

だけど

芹奈ちゃんの体はひどく震えていて
海里さんのいない現実を小さな体で一生懸命、受け止めようとしている気がした。

なのに今にも泣き出してしまいそうで。

そんな芹奈ちゃんをどうにかしたくて
思わず、俺は着ていたジャケットを
芹奈ちゃんの肩に掛けた。

このジャケットは少し前。
海里さんに譲ってもらったものだった。

本当は今日なんか蒸し暑いし、
こんな分厚いジャケットなんて着る必要は
無かったのだが、…着ていたかったのだ。

「ゆっくり息吸え。な?」

俺みたいな汚い手がこの子を汚さないように。

せめて。そう思い、ジャケットの上から…
芹奈ちゃんの小さな背中をさすった。

暫くして、
なんとか呼吸が落ち着いた芹奈ちゃん。