だいぶシスコンだけど、
ちゃんと強くて、芯のある、優しい人。
ずっとそんなイメージを持っていた。

ずっと……尊敬していた。

俺も海里さんみたいに、なりたかった。

俺にとって海里さんはかけがえのない
特別な存在だった。

海里さんが亡くなった翌日。

ひどい喪失感と罪悪感に
押しつぶされそうになりながらも
俺には……海里さんに与えられた
最後の使命があった。

死の間際​の事。

海里さんは、俺に言った───────…

これから先の零愛の総長を俺に任せる、と。

あと…

海里さんの大切な妹さんである、
芹奈ちゃんのそばにいてやって欲しい、と。

自分には
零愛の総長になる資格も
芹奈ちゃんのそばにいる資格も、ない。

……ないけど、死の間際に声を振り絞って
俺に託してくれたその‪”最後の想い‪”‬を、
とても無下には出来なかった。


***

海里さんと芹奈ちゃんの住んでいるという
一軒家に向かう道中の事だった。

「変に抵抗するからだよぉ〜、お嬢ちゃぁ〜ん」

「あっ、うっ……」

人気の少ない路地裏で
物騒な声が聞こえてきた。

見ると、小柄な女の子を
大柄な男2人が壁に押し付けて
首を締めている光景が視界に飛び込んできた。