***

「桃季!伏せろ……!!!!!!」

あの日。

獄狂乱が隠し持っていた
銃で撃たれそうになった俺を……

海里さんは

庇ってくれた。

ーーバン……………………………ッ!!!

大きな銃声が響いた後。

「海里さん…っ!」

腹部を撃たれ、冷たいコンクリートに
横たわる海里さんに俺は何度も呼びかけた。

「しっかりして下さい……!!!」

カスカスの声を必死に出していた。

俺のせいだ、と全身が叫んでいた。
押しつぶされそうな罪悪感が、
思考を全て……本当に全て、飲み込んだ。

「もも…………き、頼みが……あるんだ」

俺の目から1滴の涙が地面へ落ちた時だった。

血だらけの腹を押さえる海里さんが俺の名前を呼んだ。

その声が今にも消え入りそうだったので俺は屈んで海里さんの口元に耳を近づけた。

「なんですか……っ」

俺の声は酷く震えていて。
自分から発せられた声じゃ……
ないんじゃないか、と思った。

だけど、それをなだめるみたいに
鼓膜に、優しい声が届いた。

「芹奈の……そばにいてやって欲しいんだ」