「俺は君のフォローをするつもりで小百合さんに気を使ったんだが、むしろ誤解を生んでしまったらしい。友人に指摘されるまで、そんなふうに誤解されているとは夢にも思わなかった」

 続けて淡い雰囲気のドレスを選んだ理由も言った。
「ちゃんと君に聞けばよかった。誤解させてすまなかったね」

(それじゃ)
 小説では小百合も、麗華という婚約者がいる流星を好きになってはいけないと、ずっと気持ちを抑えていた。

 ふたりが結ばれたのは、八十八夜の事件から二年後、荒鬼家が断絶し落ち着いてからだ。

 もしかしたら、運命は変えられる? でも――。

「私は悪女と評判で」

「関係ない」
 流星は毅然と言いきった。

「この前のお茶会でも陰口を聞き流し、堂々としてる君は素敵だったよ」

(見ていたの?)

「君がいた木のすぐ近くに俺もいたんだ」

 彼は全部知っていて、それでも受け入れようというのか。

「鬼を倒した後、助けたのが君だと知ったとき、どれほど驚いたか、麗華。俺は君が好きなんだと、あのとき気づかされた」