「いえ、努力で人を愛せるものでありませんし。では」

 今度こそ行こうとして体を捻ると、ガシッと腕を掴まれた。

 ますます仰天して振り返ると、彼は目を細めて片方の口角を上げる。

「ダンスを踊ろう」

「ダンス?」

 今、なぜ、ダンス? と混乱するまま、断る間もなかった。

 音楽がスタートする。
 ちょうど舞踏会が始まるところだった。引っ張られるようにしてホールの中央に行くと、そのまま彼は麗華の手を取りダンスを始める。

 ダンスが得意な麗華の体は、勝手に動く。

 くるくる回りながら、頭の中もぐるぐる回る。

 状況から察するに。

(もしかして、婚約破棄してくれないの? えー?)