とても本心とは思えない。小桃はずっと横暴な麗華のわがままに振り回されてきた。

「荒鬼家が嫌なの?」
 両親は麗華のように使用人に威張ったりしない。居心地はいいはずだ。

「嫌じゃありません! でもお嬢様について行きたいんです」

 ちらりと小桃を見ると、彼女はにっこりと微笑む。

「お嬢様。私の兄の学費とか、母の治療費とか、奥様にお願いしてくださったんですよね」

 麗華はこっそり母に出してあげてほしいと頼んでいた。
 内緒のはずなのに、母が伝えていたのか。

「それはいつもわがままを聞いてもらっているお礼」

 小桃は左右に首を振る。
「お嬢様は不器用さんですね」

「なによ。失礼な」

 クスクスと小桃は楽しそうに笑った。
「こうやって必ず私にもお裾分けをくださるし、私は知ってますよ、お嬢様が実は口で言うほど意地悪じゃなくて、照れ屋なだけだって」

 褒められてお尻がムズムズする。