隠れるとしたらここだろうという場所を見極める。

「ねえ小桃、喉が渇いたわ。ラムネふたつと、あれが食べてみたい」
「カステラですね! 買ってきます」

 小桃が出店に行っている間に、木陰のベンチへ行きハンカチを敷く。

 そして、ベンチの下にそっと指輪を落とす。
 指輪はちょうど草の陰に落ちた。
(これでよし)

「お待たせしましたー」
 両手でラムネの瓶と丸くて小さなカステラが入った紙袋を持った小桃が、小走りにやってくる。

「ラムネ一本は小桃の分よ、カステラも、はいどうぞ」
「えっ、私までいいんですか?」
 小桃はいつも遠慮する。

「先に食べて。毒味して」

「ではいただきます。ありがとうございます、お嬢様」
 クスッと笑った小桃は、カステラを一粒つまむと、ちょっと心配そうに麗華を振り向く。

「お嬢様、お嫁に行くときは私を連れて行ってくださいね」

 思わずラムネを吹き出しそうになる。
「な、なによ急に」

「私ずっとお嬢様と一緒がいいです」