この体は気が狂うくらい全身全霊で流星を愛していたのに、彼には全身全霊で嫌われているのだ。

「ようやく気づいたのです。愛されない不幸に」

 これで納得できるはず。
「では、よろしくお願いします。父には私から言っておきますので」

 ぺこりと頭を下げた。
 そもそも麗華が彼にひと目ぼれをして父に頼み込み、許婚にしてもらったのだ。

 荒鬼家の財力にものを言わせて父が買い取った許婚の地位である。言い出した麗華さえ引き下がれば、それで済む。

「努力しよう」

(え?)
 もしや、慰謝料の心配なのか。

「心配しないでください。そもそも私のわがままなので、慰謝料は――」

「いたらなかったようだな」

 意味がわからない。
「な、なにがですか?」

 麗華の動揺をよそに、流星はにっこりと微笑む。

「君を愛せるよう、努力しよう」

 唖然とした。

(へ? な、なにを言っているの? この人は)

 まるで婚約破棄をしたくないように見える。

 というポーズ? あまりあっさり受け入れると、後々まずいと思ったとか。