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麗華は、いっそ正直に聞こうと思った。
「どうして私なんか、かまうんですか」
早く婚約を解消したほうがお互いのためなのに。
ジッと睨むと、流星は困ったように笑う。
「君はいったい自分をどう思っているんだ」
(そんなこと言われても……荒鬼麗華は悪役令嬢だ)
まさか美人だとか家が資産家だと聞きたいわけじゃないだろうし、となると、意地悪なろくでなし以外に浮かばない。
「流星さんこそ、私をどういう人間だと思っているんですか?」
彼だって知っているはずだ。数々の意地悪シーンを目撃しているのだから。
つい先頃、池に落ちたときだって、彼は麗華ではなく、小百合を助けた。
ずぶぬれになった麗華に手を差し伸べはしたが、そのときの彼と小百合の会話をしっかりと聞いている。
『麗華さんを助けてあげてください。私は大丈夫ですから』
『君は本当に人がいいんだな』



