溺愛されては困るのです ~伯爵令嬢、麗華の憂鬱~

 あえていうなら、そこが気に入っていて、婚約者としての麗華にそれほど不満はなかった。

 だが、麗華は違うらしい。
 いざとなると、婚約解消をしたいほど強い不満があった。

『私、愛のある結婚がしたいんです。流星様は私を愛していないでしょう?』


(愛か……)

 ふと思い立った。
 悦巳なら、いい解決策を思いつくかもしれない。

 彼は、兄がいるため特に決められた婚約者もなく、自由に恋愛を楽しんでいる。
 第九師団の副師団長という立場ゆえ、結婚して独立すればなにかしら爵位を与えられるはずで、未来に不安のない自由人だ。

 会話がほかの話題流れたのを見計らって、悦巳だけに聞いてみた。

「なぁ悦巳、彼女を喜ばせたいんだが、どうしたらいい?」
「ん?」

「実は、困ったことに――」
 舞踏会で麗華に一方的に告げられた婚約破棄の話をして聞かせた。

「まじか」
 悦巳はゲラゲラと笑う。

「愛はないが、彼女が納得するよう、見せかけたいんだ」
 流星はいたって真面目な顔をして悦巳を見る。