溺愛されては困るのです ~伯爵令嬢、麗華の憂鬱~

 女性なら誰でもいいというわけではないが、自分をよく知る親が一条家の嫁として相応しい女性を選んだのだから、それで十分である。

 強いて条件を言うならば、強い女性であってほしい。
 鬼との死闘を繰り広げたあと、トランス状態が半日ほど続くことがある。目が血走り口調も行動も乱暴になってしまう。

 そのときに妻が弱い女で怯えられたり泣かれたりするのは困る。落ち着くまで淡々とやり過ごしてくれるくらいの強さがほしいと思った。

 流星がもっとも苦手とする女性は、言いたいことも言えずにただじっと耐え、そのくせうじうじと泣く弱い女性である。

 その点、荒鬼麗華は肝っ玉が据わっているに違いないとみた。
 恥も外聞もなく、あれほど堂々と小百合に嫌がらせをするのだ。
 なにをされても人前で泣かない小百合も相当強いと思うが、麗華の我の強さはなかなかのものである。

 いざ結婚して上手くいかなければ、彼女は気に入らないと暴れるか離婚するか、わかりやすい行動にでるはずだ。