溺愛されては困るのです ~伯爵令嬢、麗華の憂鬱~

「もしかしてお前、小百合さんをなんとも思っていないのか?」
「なんともとはなんだ。人として尊敬しているぞ」

 涼風小百合は人柄がいい。
 誰にでも優しく人格者だ。今日だって、あの若さで自分の役割を自覚しお茶会を主催している。
 邸内から両親が心配そうに見つめているが、なにひとつ問題は起きていない。十七歳という年齢でここまでできる女性はそういないだろう。

「尊敬しているだけなのか?」
「ほかにどう思えっていうんだ」

 悦巳は椅子から背中を離し、身を乗り出した。
「ってことは流星、お前は本当に麗華さんと結婚するんだな?」

 流星は怪訝そうに首を傾げる。
「ああそうだ。最初から言ってるだろ?」
 いったいなんなんだと呆れながらワインをあおる。

 麗華と結婚すると決めたときから、一度も気持ちは変わっていない。

 縁談を決めたのは親だが、特に異存もない。
 そもそも流星は恋だの愛だのに興味はなかった。