溺愛されては困るのです ~伯爵令嬢、麗華の憂鬱~

 悦巳が言った話はすべてその通りで、皆も大きくうなずく。

「なんだかんだ、いつも彼女を助けてるよな」
「そうだよ。お前は誰よりも小百合さんと距離が近いじゃないか」

 流星には意外だった。
「お前たちの目にはそう見えるのか?」

 彼らは揃って大きくうなずく。

「ふーん」
「おい、『ふーん』じゃないだろ。お前このままだと麗華さんと結婚しなきゃならないんだぞ?」

 流星は意味がわからないとばかりに首をかしげた。
「当然だろう? 俺の婚約者は荒木麗華だ」

 呆れたように見つめてくる彼らの目を睨み返し、流星は溜め息をつく。
「池でも舞踏会でも、俺は婚約者のフォローをしただけだぞ」

 麗華は小百合を敵視している。
 それは誰の目にもあきらかで、当然流星も気づいていた。

 だが、彼女なりの理由があるのだろう。追々聞いてみるとして、誰しも嫌いなやつのひとりやふたりいるものだと、あまり気にしていない。

 尻ぬぐいは自分の責任かと思い、大事にならぬようその都度手を貸してきた。
 それだけだ。