高い天井から大きなシャンデリアがぶら下がり、キラキラと虹色に煌めいている。

 荒鬼伯爵の一人娘、荒鬼(あらき)麗華(れいか)は会場に足を踏み入れ、大きく息を吸った。

 今夜は舞踏会。
 鹿鳴館には帝国の華族が集まっている。

 扇で顔を隠した麗華は忙しく視線を動かした。

(抜きん出て素敵な人のはずなんだけど……)

 ダンスが始まってからでは動きにくくなる。今のうちに見つけたいが、男性はみんな似たり寄ったりの燕尾服を着ていて区別がつかない。

 目当ての人物を探し当てるのは難しいかもしれないと、残念に思ったときだった。

(――いた)

 ひときわ背が高い彼の、彫刻のように整った横顔が見えた。

 強い決意を胸に彼に向かって歩くと、少しずつ全身が見えてくる。
 背筋は伸びて長い脚にすらりとした体躯。会場内の誰よりも見事に燕尾服を着こなす姿に、さすがと溜め息が漏れた。

 彼の名は一条流星(りゅうせい)。一条公爵家の令息で、この世界のヒーローだ。