おいしいものを囲んで、他愛もないけれど取り留めもなく、笑い声がそこかしこに飛び交っている十畳ほどの幸せな空間。


 あと何回、こうしてみんなと過ごせるんだろう。

 あとどれくらい、こうしてみんなと笑っていられるんだろう。


 幸せの大きさに比例するように、それぞれの進路へ向かう淋しさも大きくなる。

 けれどきっと、これからみんな大人になっても、わたしの隣には結弦がいて、美輝の隣には怜がいるだろう。

 喜びをわかち合い、ときには共に悲しんで、ずっと変わらずに過ごしていきたい。

 移ろう季節の中でみんなと出会って、幸せという夢をもらった。

 それは決して手放せない宝物だ。

 わたしの手はそれほど大きくないけれど、なるべくたくさん抱えていたい。

 この夢を守るためなら、ピアノはもちろん勉強だって頑張れる。どんな困難も乗り越えられる。

 そうやって日々を積み重ねて、なりたい自分になれますように……。

 この満ち足りた幸せが、これからもずっと、続きますように……。