しばらくしてバスがカーブをゆっくりと抜けると、視界に大きな湖が広がってきた。

 この湖を見るのはこれで三度目だ。これまで見たのとなにも変わらず、その水面は静まり返っている。

 手の震えが止まらない。

 結弦は運転手さんと少しだけやりとりを交わして、すぐに戻って来た。


「運転手さん、気をつけて走ってくれるって。念のために俺たちもシートベルトをしておこうか」

「なんて、伝えてくれたの?」


 不安を払うように訊いてみた。


「湖の向こう側に、ふらふらした対向車が見えましたよって言ったんだ。それなら気をつけて運転するから、安心してくださいって言ってくれたよ」

「ね、琴音。気をつけてくれるって言ってるし、大丈夫だよ。安心して」


 美輝がわたしの背中をさすって、そっと囁く。


「こんなでかいバスなら相手からもよく見えるし、見えたらすぐ減速するだろうな」


 怜がひとり言のように呟くが、これもみんなを安心させるためだということを、わたしは知っている。怜はそういう人だ。

 どこまでかはわからないけれど、みんながわたしの言葉を信じてくれたようで嬉しかった。

 でも、それだけで本当に大丈夫なの? これで事故を防げるの?