「確かにこの先には七色ダムがあるな。琴音、なんでダム湖があるってこと知ってるんだ? 来たことあるのか?」


 結弦が後ろから顔を出した。


「結弦が言ってたの! この先にダムがあるからって。見応えがあるから見たほうがいいって。でも湖の横を走ってると急に対向車が飛び出してきて、それで!」


 わたしが振り返って叫ぶと、結弦は顎に手を当てて考えこむような仕草をしたが、すぐに口を開いた。


「わかった。運転手さんには俺から伝えてくるよ。だから安心して」


 結弦は席を立ちバスの前方へと歩いていく。

 その間、周りからはおそらくわたしについてのひそひそ話がそこかしこで沸き上がっていた。