ようやく涙が収まってくると、結弦が海へ星を見に行こうと提案した。

 美輝はもう一度温泉に入るから、怜は眠いからという理由で断ったため、わたし達はふたりで行くことになった。

 坂道を下って夜の海へと向かう。繋いだ指先からじんわりと結弦のぬくもりが伝わってくる。


 なんだか照れくさい。

 考えてみたら、今日はずっと結弦といたのにふたりきりになったのも手を繋いだのも今が初めてだ。


 そういえば旅行に来る前、いつだったかひとり淋しくなってしまって、星が見たくて夜空を見上げた。

 もちろん都会の空では星なんて殆ど見えないけれど。

 でも結弦も美輝も怜もいてくれるのに、どうして淋しかったんだろう?

 よく思い出せないでいると、結弦が歩きながら言った。


「夜ってさ、ふとした瞬間に淋しくなるよね。ここに住んでた頃、そんなときはよく海で星を見てたんだ。都会に出てからは夜空を見上げても星が見えなくて、それが悲しくて余計に淋しくなったな」


 今は星が見えない代わりに琴音がいてくれるけど……と、さりげなく付け足した結弦の表情は暗くてよく見えないけれど、わたしの頬はおそらく夕焼けみたいに赤く染まっていただろう。

 暗い夜道は怖いけれど、今だけは助かった。