私、兒玉美桜には好きな人がいる。
その人の名前は神田凰太くん。
私は“おーくん”と呼んでる。
「おーい……美桜! 神田先生が呼んでたよ!」
「ふふっ……やった!」
同じ学校にいて、学校イチのイケメン。
高身長で頭が良くて、みんなに勉強を教えてるタイプの人。
バスケ部所属で、よく作戦を考えてたりしてるみたい。
って言っても、先生なんだけどねっ。
「おーくん、美桜だよ……っ」
“視聴覚室”の札をこっそりめくって白紙にする。
これでこの教室は空き教室だっ……!
私は、るんるん気分で好きな人の待つ教室に入る。
「よお、美桜……じゃなかった、兒玉さん」
よお、と言ったときのおーくんの表情とか声とか、しっかりしてない気だるげな感じも大好き。
「兒玉さんとか嫌っ。美桜って呼んでよぉ……」
おーくんは学校では、『先生』という立場だから、昔のように下の名前では呼んでくれない。
むぅ……美桜は頑張ってるのに……。
「ねえ、ぎゅってして? 寂しい……」
「ばーか。先生だから気安く近づけないんだよ」
「やだ……ぎゅってしてくれないと学校サボるから……っ」
こう言うと、おーくんは決まって困った顔をする。
大好きなおーくんを脅すみたいなのは嫌。
でも、くっつきたかった。

