麻衣ロード、そのイカレた軌跡⑥/伝説のあの夏…、ファーストレジェンドは奇跡を生んだ!

死闘、果てず/その3
祥子



「喰らえ―!」

間一髪で横田の非情の刃を避けた麻衣は、さらに横になった態勢から、地面の砂を掴んで横田の顔面に投げつけた

「ぎゃあー‼」

起死回生の砂爆弾は横田の両目を直撃したよ

耐え切れず木刀を放って両目を手で覆った横田は、しかし、そのまま走り出したんだ

再び川に向かって…


...


ヤツ…、途中で”何か”を拾ったわ…

バシャ、バシャ…

横田は素早く目に入った土を川の水で洗い流してした

「待ちやがれー!」

今度は麻衣が、凄まじい形相で横田を追って、川の中に駆け込んできた

さっきまで、自分の顔面間近に迫っていたギザギザの折れた木刀を手にして…

二人はまたもや川の中で向き合った

「テメー!ぶっ殺してやるー!!」

怒り心頭の麻衣は、横田が真っ二つに折った木刀という凶器を握り、その横田めがけて川の中を突っ走って行った

バシャ、バシャ、バシャ…

「横田!死ねー!!」

カキーン…

うわー…

麻衣の木刀は大きく吹っ飛んだぞ…

そう…、横田の手には、またもやパイプ棒が握られていた

目を押さえて川に入って行った時、地面から拾い上げたんだ

自分で払い飛ばしたパイプの落ちた場所を、あらかじめ頭に入れていたんだろう

苦境に陥って逃げる局面でも、ヤツは冷静さを保てた訳だ

しかも、その闘争心は一瞬たりとも失せることはなく、次の攻めは常に頭の中で描いている…

...


「本郷!今度こそどたまかち割ってやるぞー!!覚悟しろ、テメー!…うぉー!!」

ガツーン!

麻衣ー!!

ついに喰らったか…

...


「麻衣ー!!」

「きゃあー!!」

またもやあっちこっちから叫び声が上がった…

「うぐぐっ…」

思わず片膝を川の中に落とし、パイプ攻撃を喰った右側頭部の手を当てて、麻衣は苦悶の表情だ

横田って野郎は、あんな残虐なこともやれちまうのか…

もう普通の女子高生なんぞと言ってられねーって‼


...


だが、さしもの横田も今の一打で相手が気になったのか、振り上げたパイプ棒を下におろして麻衣の様子を覗ってる…

と、その時だった

麻衣が横田の膝辺りにタックルをかました

凄いスピードだ

バシャーン…!

横田は大きな水しぶきを立てて後ろに倒れたぞ!

既にパイプは手から放れていた

「横田ー!そろそろ勝負だ!素手で来い‼」

「うぉおー、行くぞー!」

ここから、川の中での二人の像絶な殴り合いが始まった…