私、流川美桜は、誰にも知られてはいけないヒミツがある。
小学生になる前、父を他界。女手一つで育ててくれた母。だが、中学生になる頃、母が再婚した。そして、中3の時、義父との子供を産み、死別した。
この頃の私は知らなかった。私のいないところで、母が苦しんでいることを。
「…ただいま。」
「こんな遅い時間まで、どこほっつき歩いてるんだ。」
この時間はいつも義父はいないはずなのに、いることに少し恐ろしく思った。
「どこって…今日は学校です。お義父さんこそ、なぜ。」
「お前はまだ口答えする気か?誰に向かって、そんな口を効いてるんだ!」
「お義父さんの質問に答えただけです。」
「お前は本当に母親そっくりだなァ。そういうところよく似ているなァ!」
__パチンッ!
左頬に鋭い痛みが伝う。そして、叩かれたということを理解した。今日はまだマシな方だ。平手打ちで済むなら。
「あーあ、綺麗な顔が傷付いちまったなァ。もう、どこ傷付けても一緒だなァ!あ?」
安堵したのも束の間、義父が私のシャツのボタンをプチプチと外していく。
「キャッ!やめて!嫌!」
「また反抗する気か?テメェ、懲りねなァ?!」
ああ、私の人生が終わる。こんな奴に犯されたくない。涙目になりながら、抵抗を続ける。
「そんな顔をして止めるとでも思ってるのか?テメェと思ってること逆だよ、逆!そそられるんだよッ!」
私の首筋に義父の舌が伝う。気持ち悪い。いい歳したおじさんに舐められると思うと恐怖心が一気に増す。このままじゃ、最後まで__
シャツを脱がせようと両手から手が離れたその時、力いっぱい押し倒した。ドンッと鈍い音が聞こえ、しばらくは起き上がらなさそうだと読んだ私は、ここから逃げなきゃという気持ちがいっぱいで、スクール鞄とブレザーを持ち、靴を履いて、走って家を出た。
どこ行くんだ!という怒号が聞こえたが、ただ走り続けた。
最寄り駅に着いた頃、追いかけて来ないのを確信した後、どっと疲れが押し寄せてきた。
「…これからどうしようかな。」
独りでに呟いた声は人並みに紛れて消えていった。
