「雪乃!」
私の名前を呼ぶ声は、
私の大好きなお父さんの声だった。
(あぁ、そっか…、これは夢か…)
きっと、現実ではまた、
何日か深い眠りについたままなのだろう。
私の病気の症状の一つは、
眠りについて何日も目が覚めなくなること。
長い時は、三週間眠り続けたことがある。
「………」
目が覚めると、やっぱり病室で、
私は酸素マスクをつけられていた。
「雪乃ちゃん、起きた?」
そう言って、
タイミングよく病室に入ってきたのは、
いつもの優真先生と看護師だった。
「私……何日眠ってたの?」
「三日間。
でも、他に異常はなっかよ」
「…そっか…」
そう言うと、先生は病室から出て、
看護師が慣れた手つきで、
点滴を付け替えてくれた。
「このまま…目覚めなければいいのに…」
そう呟く私の声が、
看護師の耳に入ることはなかった。
いい夢を見ながら永遠の眠りにつく。
それ以上に、
いい死に方なんてないと思う。
苦しまずに死ねるから。