「工藤先生!
藍原雪乃さん、病室にいません」
「⁉
すぐに院内探して」
「分かりました」
そんな声を背中に私は病院を出た。
外は雪が降っていて、静かだった。
日が沈み始め、
寒さが増す中、
私はひたすら歩いた。
どこに行きたいとかもなく、
ただ、遠くに行きたかった。
30分ぐらい歩いて、
途中にあった公園に入り、ベンチに座った。
「…もう……
…疲れた……」
雪が降る中、
私が発した言葉は、夜の静寂に飲み込まれた。
この静寂に、私ごと飲み込んでほしかった。
でも、そんな願いなんて叶うはずもなく、
ただ静かに雪が降り続けるだけだった。
「女の子は体を冷やしちゃだめだよ」
誰もいない公園だったはずなのに、
突然声をかけられ、
驚いて振り返ろうとした瞬間、
何か暖かいものに包み込まれた。
そして、
そこには男の人が立っていた。
「……」
目が合った瞬間、
私の心臓がドクンと音をたてた。