でも、すぐにまた誰かが入ってきた。
「……雪斗くん…」
そう言って、入ってきたのは、
雪乃の主治医の工藤先生だった。
僕の名前を呼んだ先生の声は、弱々しかった。
でも、表情は何一つ変わらなかった。
「……僕は…まだ見せていないんです…。
雪乃に僕の世界を……」
僕が話し始めても、
ただ、静かに聞いているだけだった。
「……明日会おうって……
…約束したんです。
…だから、
その時に話そうって思ってたんです。
……でも…
……間に合わなかった」
涙を止めようとしても、溢れるばかりだった。
「…どうして…
…どうして雪乃は…
まだ辛い思いをしないといけないんですか…」
なのに、先生は表情一つ変えない。
そんな先生に、
今の感情をコントロールできない僕は、
怒りに交えた言い方をしてしまった。
「…聞いたの?」
聞き間違いであって欲しかった。
雪乃の身体にメスを入れるなんて、
僕の聞き間違いだと思いたかった。
でも、先生から出た言葉で、
それが本当のことだと、
嫌でも分かってしまった。
「……もう…これ以上…
…雪乃を傷つけないでください。
………お願いします…」
何に縋ればいいのかなんてわからない。
何かに縋ったところで、雪乃は帰ってこない。
だから、
僕はこうやって頭を下げるしかなかった。

