「…雪斗」
「え…?」
「僕の名前は、西宮雪斗。
僕の初めてのファンは、藍原雪乃。
よろしくね」
そう言って、さっきの真剣な表情から、
微笑みに変わり手を差し出してきた。
「……」
いいのだろうか。
いつ死ぬかわからない私が、
雪斗くんの一番目のファンになって。
私の中で疑問が生まれたが、
体は正直で、雪斗くんの手を握り返していた。
真っ暗だった私の世界に、
光を差してくれた雪斗くんを
手放したくなかったから。
少しの間でいい。
私の命が尽きるまででいいから、
そばにいてほしいと思ってしまった。
「雪乃ちゃん、そろそろ時間」
そう言って、
私の方に歩いてきたのは、
優真先生だった。
「…誰…?」
「お、お父さん!」
雪斗くんの質問に私が咄嗟に声を出すと、
優真先生は一瞬目を見開いたが、
何も言わずに少し頭を下げた。
それにつられて、雪斗くんも頭を下げた。
「…じゃあ、私行くね」
「あ、うん。
またね」
私は一度も振り返らずに、歩いた。
“またね”という言葉に、
私が返せる言葉がわからなかったから。
私には先の約束はできない。
でも、雪斗くんに会えるのが、
今日が最後だとしても、
私は後悔しないと思う。
生きる理由を与えてくれた人。
きっと、この先に雪斗くんみたいな人には、
出会えないと思う。
たとえ、私が生まれ変わったとしても。

