「…先生…」
「うん、何?」
「…今日の夜……携帯…貸してくれる?」
「携帯?」
不思議そうに聞き返す先生に、頷いた。
「…雪斗くんに……電話させて…。
…出るかは、分からないけど…
治験薬のこと、話したい」
「そっか」
先生は、いつものように、
でも、どこか苦しそうに微笑んだ。
でも、その苦しそうに見えた表情は、
ほんの一瞬で、すぐに消えていた。
だから、私も見なかったことにした。
「じゃあ、薬入れていくね」
そう言って、
点滴に繋がれた腕から
少しづつ薬が入っていった。
「もし何かあったら、ナースコールで教えて。
ちょっと、
頭が痛いなぐらいでもすぐに教えて」
真剣に話す先生に、私も頷いた。
そして、少しして、
先生は病室から出ていった。

